選考委員  伊藤 一彦(いとう かずひこ)

■プロフィール(2010年時)

昭和18年、宮崎県生まれ。

早稲田大学第一文学部哲学科卒業。
歌誌「心の花」選者。「現代短歌 南の会」代表。

若山牧水研究家であり、若山牧水記念文学館長をつとめる。
高齢者のための短歌大会を積極的に支援するなど、多方面で活躍している。

読売文学賞、寺山修二短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞等を受賞。
若山牧水賞選考委員を第1回から務める。
著作は歌集・評論集ほか多数。

 

 牧水という人は、すごくふるさとを愛していた。友達も愛したし、家族も愛した。自然も愛していた。でも、自分の本当のふるさとはどこだ、魂のふるさとはどこだと求めていたと思うのです。いわば魂の源郷といいますか、われわれ現代人は自分の生まれたふるさとはありますけれども、自分の本当のふるさとはどこなのか、自分のメランコリーをいやしてくれるところはどこなんだ、ということにつながっていくのかと思います。牧水という人は、近くの小さなものを愛すると同時に、とおくにある、はるかなものを愛する両面性があります。優れた人というのはだいたい相反するものを持っていて、それを大きなパーソナリティによって統一しているのだと思います。牧水も、目の前の小さな草を愛すると同時に、はるかなものを愛する気持ちがとても強いです。
※講演「牧水の旅の歌」より